残留農薬の問題とメロンを安全に食べる工夫

日本では様々な作物が栽培されていますが、中でもメロンは高級な果物として人気があります。個人で味わう他に贈答品としての需要もあるメロンですが、一方で残留農薬による人体への影響が問題視されている事実は否定できません。

ここでは、農業に不可欠とも言える農薬に関する問題やメロンを安全に食べる方法についてご紹介します。

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メロンが高級品として扱われる理由

日本でメロンの栽培が本格的に始まったのは、昭和30年代とされています。メロンは大別すると東洋系と西洋系があり、現在の日本で高級品として扱われているのは西洋系の品種です。水分が多く糖度も高いメロンは濃厚な甘みを持っていますが、このような風味を持たせるには非常に大きな手間がかかっているのも事実です。

メロンは一本の苗に複数の果実をつけますが、市販されているメロン特有の濃厚な甘みを持たせるには一本の苗に果実を一つだけ残す必要があります。果実が複数ついていると甘味を作るための栄養が分散されてしまい、風味が落ちてしまうからです。

そのため、メロン栽培は必然的に収穫量が少量に留まり、それに伴って市場価格も高騰します。栽培に手間がかかるメロンですが、特に温室栽培であることが価格の高騰に拍車をかけていると言えるでしょう。

メロンの原種はアフリカの砂漠地帯が原産地ですので、高温で乾燥した環境を好みます。一年の寒暖の差が大きく、湿度が高い日本はメロン栽培に不向きな環境です。

そのため、メロンに適した環境を保つためにはビニールハウスなどを使った温室栽培が必須と言えます。

温室栽培は設備を保つための費用が高いため、そのコストがメロンの価値に上乗せされています。

メロン栽培には農薬が必須

安全を考慮したという触れ込みで無農薬の野菜や果物が販売されています。残留農薬の危険性が指摘されていることから、農薬を使わずに育てた作物には一定の需要があるのも事実です。一方で、メロンのように農薬を使わない栽培が困難な品種もあります。

メロンの原種は過酷な環境で育つことから植物の中でも頑丈な部類に入りますが、甘みを持たせるために改良された現在のメロンはむしろ繊細で、病気や害虫に弱いと言えるでしょう。葉や果実の成長が妨げられ、悪化すると枯れてしまうおそれもあります。

病気や害虫は人の手だけで防除するのは非常に困難ですから、品質の維持や価格安定のためにも農薬の使用は欠かせません。使用する農薬は指定された量を厳守する必要がありますので、通常の使い方では人体への影響はほぼないと言えます。

しかし、決められた使い方を守らない悪質なケースも稀にあることから、健康被害を避けるためにも消費者の側が農薬に関する正しい知識を持ち、冷静に対処することが大切です。

日本の安全基準は緩い部類に入る

作物に使用する農薬の量や種類には一定の基準が設けられています。農業従事者はこの基準に沿って使用する農薬の量や種類を決めていますが、同じ作物でも農薬の基準は国によって異なるのが実状です。栽培する環境や輸送に要する時間などの違いがあるため、一概にどの国の基準が正しいとは断言できませんが、日本の安全基準は諸外国と比較すると緩いのは事実です。

外国では使用が禁止されている農薬を日本では普通に使っているケースも少なくありません。使用可能な農薬でも少量に限られていることも多く、この点を見て日本の安全基準は緩いと見做されることがあります。一方で、収穫した作物の保管方法や輸送に要する時間などを考慮すると、日本の基準は緩くないとする見方もあります。

残留農薬の問題や家庭で処理する方法について

残留農薬とは、収穫した作物に農薬の成分が付着した状態を意味しています。農薬には人体に有害な成分が含まれている物があり、その成分が付着したままの作物が市場に出るのは危険と言えるでしょう。残留農薬による健康被害は誰の身にも起こると言えますが、農薬に関する誤った認識が根強く残っている事実は否定できません。

日本で使われている農薬のほとんどは空気に触れると次第に分解する性質があります。散布直後は成分が付着していますが、時間の経過と共に自然分解され、収穫期になる頃には安全な状態になっています。風雨の影響を受けない温室栽培のメロンも同様であるため、市販されているメロンを素手で触っても体調不良に陥ることはありません。

人体に影響がない程度の微量であっても、農薬の成分を口に入れたくないと考えてしまうのは仕方のないことです。しかし、メロンの場合は農薬の成分が果肉まで及ぶことはありません。農薬の成分は表皮に付着していますが、メロンは通常皮の部分を食べることはないため、安全と言えるでしょう。

どうしても残留農薬が気になる場合は家庭で使う食器用洗剤で表皮を洗うのが効果的です。食器用洗剤の多くには野菜や果物の洗浄も可能と記載されていますので、手軽に使うことができます。表皮に傷がつくのを避けるため、柔らかいスポンジで撫でるように洗いましょう。

メロンの白いカビには要注意

メロンの表皮に白い粉が付着していることがあります。一見すると粉薬のような形状なので、これが残留農薬と誤解しがちですが、メロンの表皮に生じる白い粉の正体は植物が感染するカビです。ばら色カビ病と呼ばれる病気で、感染すると果実や葉に白い粉が付着したような状態になります。

こうなると果実の甘みが失われる他、誤って食べると下痢や腹痛などの症状に見舞われますので危険です。水気が多く糖度の高い果物に多く見られる病気で、特にメロンはこの病気に弱い傾向があります。収穫した後のメロンは表皮に微量の水滴が付着しているだけでも感染するおそれがありますので、残留農薬を取り除く目的でメロンを洗う際は十分に注意しましょう。

洗った後のメロンの表皮に白い粉が発生した場合、そのメロンはばら色カビ病に感染した可能性が高いため、食べずに廃棄するのが賢明です。白い粉が付着した部分から感染するので、冷蔵庫などにメロンを保管する際は他の物に触れないよう、新聞紙などで包むのが正しい扱い方になります。

メロンの表皮を洗った後は十分に拭き取り、わずかな水気も残さないように注意しましょう。

正しい知識を持つのがメロンを美味しく食べるコツ

残留農薬の危険性は無視できない問題であり、過剰な農薬の使用が健康被害のリスクを増大させるのも事実です。一方で、メロンのように病気や害虫に弱い作物を育てる際は農薬の使用が欠かせません。無暗に忌避するのではなく、栽培する側は農薬の使用量を厳守し、消費する側は正しい知識を持つことが重要になります。

水濡れを避けるなど、購入したメロンの扱い方にも気を配るのが美味しく食べるコツと言えるでしょう。

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